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新宿武蔵野館
スクリーンは新しい世界へ旅する入り口
映画館
〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目27ー10武蔵野ビル
03-3354-5670
Website
 現代都市の代名詞とも言える新宿に、百年近く続く映画館があるとはにわかに信じがたい。しかし武蔵野館は日本でロードショウ系映画を扱う先駆としてスタートし、今は独立系映画館として実に四代続いてきた。「この業界に長くいることが幸いして、配給会社ばかりでなく、映画監督自ら上映を希望する売り込みにいらっしゃることもあります」。四代目にあたる代表取締役の河野義勝氏は話す。
 地元商店街有志により、1920年6月末日に初日を迎えた武蔵野館。当時の客席数は約600、最初に上映したのは細山喜代松とデル・ヘンダースンの作品だった。その後、1968年に河野氏の祖父、義一氏が現武蔵野ビルを新築オープンしたが、その当時でも映画を見ることは新しい世界を発見したり、別の人生を追体験したりするための特別な時間だった。現在も化粧室の鏡は役者の化粧前のように電球が飾られ、喫煙室はまるで古い探偵映画に潜り込んだかのようなムーディな空間だ。「新しい世界への入り口」としての遊び心を忘れない。
「戦後間もない頃、祖父は劇場2階席に二人掛けのロマンスシートという座席をデザインしました。カップルで映画デートに足を運ぶことが多く、それを考慮してのことでしたが、当時はかなり先見の明のある発想でした」。ちなみにロマンスシートは新宿と箱根をつなぐ小田急電鉄のロマンスカーのヒントにもなっているという説がある。
「新宿は大都市に発展しましたが、この街に根ざし、街を盛り上げた商業の一員であることに感謝しています」。終戦後の動乱期に義一氏が武蔵野館を引き継いだ頃、新宿は闇市などが混在していた場所ではあるが、活力に満ちた場所でもあった。
 そんな新宿を芸術文化のハブにしたい、という当時の義一氏の構想は見事に成功したと言える。多様性があり開かれている存在でい続けようとするスタンスは、開業当初から上映作品ラインアップにも色濃くあらわれている。「一つのものの見方やターゲットに絞るのではなく、さまざまなお客様に足を運んでいただき、新しい発見をしていただける場所でありたいです」。
映画を通して新宿にいながらスクリーンの前で「旅」をすること、あるいは新宿への「旅」を通して映画に出会うこと。新しい発見が生まれる循環がここ武蔵野館にある。