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名曲・珈琲 らんぶる
文化と人問の確かな関係が生まれる空間
〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目31−3
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新宿の繁華街の脇に佇むレトロな店構え、風情 ある味わいの看板。店の常連客が看板を作っ たというエピソードからは、「らんぶる」がいかに長 く愛されてきたかが伺える。お店の題字や店内に飾ら れた作品も常連客によってつくられたものだそうだ。

現在、三代目店主重光康宏さんによって運営される「ら んぶる」は、重光さんの祖父母が 1969 年に創業した音 楽喫茶だ。世界中の美味しいコーヒー豆を探しに旅に 出て、そこでインスピレーションを受けた形跡が今も 残る。「海外からのお客様が地下のシャンデリア、真 紅のヴェルヴェットの椅子、窓のあしらいを見て『日 本らしい』と受け取るのが面白いですね」と重光さん は話す。「でも祖父母が店づくりで最も意識したのは 文化が生まれる空間であること。文化とは、人との会 話を通して新しい知識や思想に触れて共有しあえる、 アイデアに溢れた場所から生まれます。戦後海外の音 楽に触れることが容易になった一方で、レコードを入 手できる人は少なく、ラジオが大多数の人にとって音 楽を楽しんだり新譜情報を手に入れる手段だったとい う状況も相まって、祖父母の目指した空間に人が集ま るようになりました」。

50 年後の今も、家族連れ、老夫婦、学生らがクラシッ ク音楽の流れるひとときを思い思いに過ごす。懐古主 義的であると同時に時代を越える魅力もあるその空間 には、人間的な温度が漂う。「私たちが何より大事に したいのは人との関係。今も現金のみのお支払いを続 けているのはその一例です。私たちが提供するメ ニューの対価としてお客様から手渡しでお代をいただ く、この物理的なやりとり含めて人間関係を作ると信 じています。」 地域の他の飲食店との関係も例外でない。創業当初か ら素材にこだわったバニラアイスを卸してもらってい る街の乳業屋がいるなど、このような関係性がチェー ン店の広がりやサードウェーブコーヒーブームの影響 を受けることもなく 50 年間続けられてきた理由のひ とつだろう。

大都市新宿にもある地域のお祭りは、人々のつながり をつくる上で重要な街の精神を感じる行事だと重光さ んは語る。「法被を着て神輿を担ぐことは、私たちの 家族や地域の歴史を背負うことと同じ」。確かな人間 関係をお客様とも街ともつなぐということ。新宿で生 業をするとはそういうことだ、と実感する店だ。