YOKOHAMA Magazine Issue03 Designer’s Note
Feb 19, 2021

ホテルと街をつなぐ、THE KNOT YOKOHAMA Magazine。その第3号が2月19日に発行されました。THE KNOTブランドの立ち上げをはじめ、THE KNOT YOKOHAMAのトータルデザインや、本誌のアートディレクションを担当されたデザイナー・橋本健司さんに、横浜の魅力や制作にあたってその想いをお話いただきました。
Text by Asako Fujimoto
Interview with Kenji Hashimoto
Photo by Kousuke Matsuki
眠っている魅力や価値に気づける人
「これまで発行したTHE KNOT YOKOHAMA Magazineでは「THE KNOT」と「YOKOHAMA」を両A面のように取り上げてきましたが、今回は横浜という街の魅力をより丁寧に届けたいというところから企画をスタートしました。
横浜といえばストリートカルチャーが浸透した街としても知られていますが、学生時代にレゲエ活動をやっていた僕にとって、横浜はまさに聖地のような存在で。Magazine第3号のタイトル「Rollin’」も、実は横浜出身アーティストの楽曲のオマージュ。この街で出会う人々は、エリアごとに持つ色の違いはあっても、それらを交り合わせて1つの音楽にするかように、街を流して遊ぶんです。みんな横浜の魅力をよく知っていて、東京に対して大きすぎる憧れを抱くこともない。その感覚がとても粋だなと、当時から思っていました。
今では仕事を通じて様々なお店を訪れるようにもなりましたが、空間の使い方やサービスの発想の転換が素晴らしく、魅力的だなと感じる場所が横浜にはたくさんあります。例えば、今回の取材先でもある「たけのま」は、船の甲板のような分厚いフローリングが印象的なのですが、元々その床板は、オーナーが港の散策中に偶然見つけたものだったとのこと。それから更に偶然が重なって、後日同じ港を訪れた際、地元の友人を介して管理者の方ともつながり、最終的にその木材を譲っていただくことに。そして、その直後に「たけのま」の物件に出会ったのだそうです。誰も見向きもしていないような物にも可能性を見出して、それを人とのつながりを通じて価値に変えていける、そんな目利きな人が横浜には多い気がします。異国文化と融合しながら発展を遂げた、これも横浜ならではの柔軟な強さなのかもしれません。」

残していきたい横浜の日常
「今回、第3号を制作するにあたっては「残していきたいもの」というテーマが初めに浮かんでいました。横浜に限らず、残念ながら2020年はコロナ禍の影響で休業や閉店という選択をされた方々も少なくなかったと思いますが、このような状況下でも何かを受け継ぎ、次へつないでいこうと取り組んでいる方々もいらっしゃるんですよね。そして、こういった変化や循環は、街のつながりの中で日々活動している方にとっては決して大袈裟なことではなく、日常のアップデートの先にあるごく自然な出来事なんだと気付いて。ニューでもオールドでもない地続きの日常というか。なので、取材先の選定や実際の撮影でも、誰もが目を引く壮大なシチュエーションを重視するのではなく、いかに素朴に、その場所を素直に切り取れるかということを意識しました。
ありのままの街の雰囲気を届けたかったので、全体の構成も、横浜で活動している方の目線で日常を切り取った1本のロードムービーのように仕上げています。街の賑わい、匂い、空気感を写真でどう伝えていくのかというのはとても思案しましたし、動画配信が世間的に溢れている中で、手に取れる印刷物や紙媒体としての使命みたいなものも今回の制作を経て改めて感じました。まだ手放しに遠出することは難しい世の中ではありますが、この1冊をきっかけに横浜という街に興味を持っていただけたら幸いです。また今後WEB上では、各ロケ地のビハインドストーリーも順次公開していきますので、よろしければこちらもぜひお楽しみください。」


橋本健司さん
LANDRAW 代表取締役 / デザイナー
1983年大阪府生まれ。大阪芸術大学 芸術学部 建築学科卒業後、商業施設プロデュース会社を経て、2015年LANDRAW設立。2017年に株式会社ランドローに改組。
THE KNOT YOKOHAMA全体のブランディングからインテリアデザインまで一貫して手掛ける。インテリアや建築のデザイン、ブランディングを中心に、幅広いプロジェクトにおける場所や空間の価値創造を目的とし、多岐に渡り活動中。
2021年3月には、自社で企画運営するスタジオもオープン予定。
http://landraw.co.jp/
バックナンバー

Inside/Outside

By My Side/By Your Side