自由な心が息づく五十一年目の味
Jul 27, 2018

愚羅奈蛇(グラナダ)
THE KNOT の裏を 4 分ほど歩いたところに、異国情緒溢れる小さな洋食屋がある。51 年の歴 史を持ち、スペインの家庭料理に影響を受けたメ ニューで有名な「愚羅奈陀」は二代目店主品川博之さ んが夫婦で亡き父の味を引き継ぐ名店だ。 博之さんの父は冒険心に満ちた自由な心の持ち主だっ た。それは愚羅奈陀の空間を見ると一目瞭然である。 熱心で多趣味、才能溢れた彼が何より愛したのは旅と料理だった。「よく旅に出かけては僕に店を任せていました。料理のつくり方は何も教わらず、記録に残したり正確に測ったりすることもしなかった。ただ観察して自分の体に馴染んだ感覚を頼るしかありませんでした。父がヘンテコなお土産の数々とともに帰ってきたら、旅先で食べたものを再現するのに忙しくなる、そんな日々でした」。
新宿で生まれ育った博之さんは街の変遷を長らく目撃してきた一人。時代や人が変われど、愚羅奈陀は頑なに先代の時代からあるものを守り、時が止まったかのようだ。音楽愛好家の博之さんが積み上げたCDや、メニューにレコードカバーを使用していること以外、 博之さんの父自ら様々な場所で拾った木材で作った棚 や床、テーブルはつくられた当時のままそこにある。 1964 年の英国の小銭を入れると動くジュークボック スから流れる音楽が、ますます異世界へと誘う。
食事も空間と同じく、創業当初からメニューの味も名 前も変更していない。アヒージョがまだ非常に珍しかった頃から、わかりやすいようメニュー名を「にんにくで焼いたイカ」としていたが、現在は逆にアヒー ジョがあるかよく聞かれるという。言わずもがな常連はメニューを見ることなく、いつものコーンビーフホテト、焼き鳥、焼きそばかハンバーグを頼むのが常。「料理の旅行の変化は読めないのでメニュー名も変えません。味もそうですね、毎年同じ味を続けていくと いうのは案外工夫が必要なものです。私が店主になっ て 30 年、仕入れる食材の内容は変わりました」。長く 店を営むなかで食材仕入れ先の入れ替わりも多くあっ たという。店がひとつ閉まるたびに何軒も店をまわり、料理の味が変わらないものはどれかを徹底的に試すのだそうだ。「父の時代からの常連さんも少なくなりましたがまだいます。古くからのお客さんがいらっしゃ る限り、彼らにとって古き良き新宿の味を続けていき たいです」。




Information
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店舗名
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Granada
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店舗タイプ
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Restaurant
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住所
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〒160-0023 Tokyo, Shinjuku City, Nishishinjuku, 4 Chome−12−15