Hiroshima Magazine -Issue 01-6 INTERVIEW / Local’s only 村上 仁

Sep 09, 2022

Hiroshima Magazine -Issue 01-6 INTERVIEW / Local’s only  村上 仁

いい街って、自分たちの街のことを自分たちが語れる街だと思う

アパレル小売を中心に飲食業、イベント企画、ディレクション、街づくりといった機能を持つ株式会社ローカルズオンリーのボードメンバーでありながら、プロデューサーとして日本一長いセレクト型パンフェス「パンタスティック‼®」や、「瀬戸内ローカルへの分岐路」をコンセプトにしたリノベーションホテル「KIRO 広島 by THE SHARE HOTELS」でコンテンツパートナーを務め、その1階でシェア型リキッドスタンド「cicane liquid stand」の企画運営やwebマガジン「CICANE」を手掛けるジンさんと呉の街を歩きながらこの街や旅のことを聞いてみた。

「広島の人に、広島で行くべきところどこですか?って聞くと、宮島と平和公園以外ないですよ、とか言いがちだよね。呉はちょっと違っていて、街の人があそこがおススメだとか、どこそこは見た方が良いとか、自慢話がたくさん出てくる。それって素敵なことだと思うんだよね」
火曜日の呉の本通商店街。通り過ぎるお店には定休日の看板が目立つ。
静かで落ち着いていることも手伝って、どこかノスタルジックな感覚に浸ってしまう。れんが通り商店街を南に抜けた先を進んでいくと、右手に見えてくるのがローカルズオンリーだ。

「観光客を増やそうと思うと、「ここにきたらこんなに良いことあるよ」って言わなきゃいけないし、ガイドブックに載っていない魅力が発見できる街にならないといけないんだけど、ここはまだそのステージじゃないかもしれない。もちろん徐々に街が動き始めているのも確かで、行政や街の人たちと協力しながら歩みが始まってる。代表の下野と現在のローカルズオンリーという「場」をつくったのも、昔からここにいる人と外からやってくる人の「交流の場」を作りたかったというのが狙い。今はこの街の常連になってくれる人を増やして、街の人と同じように外で街の魅力を喋ってくれる人を増やせたら良いなと思ってるよ」

ローカルズオンリーの蒼い艶やかな外壁は旧市民会館のタイルを移設したものだそうだ。単純に古い建物を保存するのではなく、どう継承するかということへの彼らの答えの一つだ。呉という街で受け継がれてきたものと、これからの新しい活動が融合し始め、関係人口を増やす取り組みが動き始めていることを確かに感じさせた。

「僕が他の地域を訪れるときには必ず散歩をする時間をとるようにしていて、特に商店街を歩くことは多いかな。商店街のお店の人と、地域の人がどれだけ会話をしているのかを観察すると、その街の距離感のようなものを掴めたりする。やっぱりそういう会話の多い商店街は街づくりの参考にもなることが多いね。呉はまさにそんな街で、ただ訪れるだけでは通り過ぎてしまうけど、お店や屋台で隣の人に聞いたらいくらでもディープな情報を教えてくれる。そんな温かさがある街だから、呉に来たらそういう楽しみ方をしてもらうのも良いかもね」

話しをしているうちにいつの間にか商店街を抜け、坂道を登った先に到着したのはYWCA。戦時中、日本海軍が倉庫として使っていた建物で、65年間変わらない姿のまま呉の街に佇んでいる。2階建の建物の踊り場に腰をかけ、ジンさんは旅についての話の続きを聞かせてくれた。

「僕にとって旅自体の意味は移動に過ぎなくて、どこに行くかということより、誰に会えるかということが大事なんだと思う。そういう意味で呉は魅力的な人が多くて、どの人も縁を大事にしている。そんな素敵な人に出会えるこの街は間違いなく、僕にとって愛すべき場所だね」
ローカルズオンリーというお店を街の交流の場として機能させながら、呉の魅力を広島に、世界に伝えられる活動に携わりたいと話すジンさんの目は街に明かりを灯すかのような熱量を帯びていた。

Local’s only 村上 仁
1978年広島生まれ。株式会社ローカルズオンリー所属。
アパレルショップ、飲食店を運営しつつ、イベント企画やブランディングにて裏方担当。おとなしい多動症で日々活動中。最近増えてきた無数の「何でも屋」のひとり。

http://www.locals-only.jp