Hiroshima Magazine -Issue 01-5 INTERVIEW / READAN DEAT 清政光博
Sep 01, 2022

旅は、旅した土地との「ゆかり」を勝手に持つことかなと思います
平和公園にほど近い、古いビルの2階にある本屋がREADAN DEAT(リーダンディート)。電車通りを望む南向きの窓からはチンチン電車の音が心地よく聞こえてくる。本棚にびっしりと並ぶ書籍は、一般流通はしていないが作り手のこだわりが詰まった「リトルプレス」が中心。
店内には小さなギャラリーも併設されていて、企画展やトークイベントなども開催されている。


「昨今、全国的に本屋が少なくなりつつありますよね。でも、本屋って本が買える場所というだけじゃなくて、新しい知識だったり、アートだったり、見たことのない風景に触れられる場所だと思うんです。それが気兼ねない距離感で楽しめる場所。そういう面白いものを広島の人に発信することで、広島の外と内をつなげられる場所であり続けたいと思っています」
熱のこもった言葉選びで静かに語るのは店主の清政さん。広島出身の彼が脱サラして地元にREADAN DEATを開店したのは2014年のこと。
それ以来、彼の思い描いた通り、ここではたくさんの素敵な出会いが生まれている。
「自粛が求められたこの一年も決して、悪いことばかりではありませんでした。身近だけど気づかなかった広島の魅力を知ることができたというか。川沿いをゆっくり自転車で走ってみたり、フェリーで島に渡ってみたり、いつもの自分の興味のレイヤーを変えてみることで、新鮮な発見がたくさんありました。思い返せば私自身もこれまで旅にでると、そこで見る風景、食べ物、空気、出会う人など、そこで暮らす人にとっては何でもないことに五感が刺激されていましたし、旅から帰った後は、その土地の歴史や風土のことを調べるようにしています。この作業を通じてその土地への愛着がすごく深まります。それと同じように、地元の魅力に改めて気づかされたという感覚ですね。そういう意味で、広島にいらした方には何気ないこの風景を楽しむ時間をおススメしたいですね」


お店と平和公園の間に流れる本川沿いの道を、軽やかにペダルを踏みながら話す清政さん。この道は春には満開の桜並木になり、道ゆく人の目と心を楽しませる。広島市内にもこんな贅沢な場所があったのだと、改めて思わされる場所のひとつかもしれない。
「広島は、自分にとっては家族みたいな存在です」
「好きな面もたくさんあるけれど、街として物足りない面も正直あります。でも家族ってどうしても嫌いにはなれないところがあるじゃないですか。そんな感覚です。広島の人はシャイな人が結構多いと思うんですが、一度打ち解けると情に厚くてあったかい人が多いですよね。人も風景も、流れる空気もゆったりとした、居心地の良い街だと思います」
広島に暮らしながら、旅をする。それは初めて知る家族の意外な一面のように例えることもできるだろう。旅人には広島を訪れるたび、彼がREADAN DEATの窓から眺める景色の話を聞きに訪れてみて欲しい。
きっと新しい出会いがあるはずだ。
READAN DEAT 清政光博
2011年にリブロ広島店が閉店したことがきっかけとなり開業を決意。東京・下北沢の本屋B&Bと品川のエキナカ書店で2年間働いたのち、2014年6月に中区本川町にREADAN DEATをオープン。
リトルプレスや写真集、暮らしやデザインにまつわる本と、作家のうつわや民藝の品を扱う。店内のギャラリースペースで行う企画展のほか、トークイベントやワークショップも行う。
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