Hiroshima Magazine -Issue 01-3 INTERVIEW / 伊都岐 佐々木恵亮
Mar 09, 2022

HE KNOT HIROSHIMAの14Fに設置しているMagazineの内容を一部ご紹介。
今回は佐々木恵亮氏のインタビュー内容です。
今でもまだ、宮島を旅している気分
宮島の出身ではない佐々木さん。14年前、23歳で起業する彼が選んだ場所は宮島だ。学生時代の縁がきっかけで、引き寄せられるようにこの地に居を構え、ロースターとしての一歩を踏み出した。そんな佐々木さんは今でも宮島にいると旅をしている感覚なのだという。
「鹿もいて、全国から人々が集まって、今は外国の方もたくさんいて、娘と一緒に海岸沿いを歩くだけでもちょっとした旅行気分です。宮島ってそういう非日常の中に自然を感じることができる稀有な場所だと思うんです」
いつもの帰路が、行き交う人の流れで冒険に感じる。行きつけの喫茶店もお客さんの顔ぶれで違った雰囲気になる。そんなささやかな変化をキャッチする佐々木さんは宮島以外ではどんな旅をするのだろう。
「決まったところに行くのが僕の旅なんです。田舎に住んでいるので、時には都会にも行きますし、温泉なんかにも行きます。でも行き先は決まってるんです。僕にとって旅で大事なのは、心が安定していること。

その時間のなかでもゆっくりとリフレッシュしたり、新しい刺激を受けたりできることが重要なんです。もちろん海外旅行にも行きたいのですが、今のライフスタイルを考えると、国内の決まったところに仕事と家族の調整をつけて出かけるのが僕にとっての旅ですね」
住う宮島の日常すら旅と感じる彼のマイルールは、もしかしたら自然なことなのかもしれない。日々経営者として奔走する彼にとって、五重の塔を見晴らす由緒ある古民家で日常生活を過ごすことや、安定した時間の流れそのものが本当に贅沢なものなのだろう。「宮島のおススメの過ごし方は、弥山に登ることです。嚴島神社とか、あなご飯とか、もみじまんじゅうとか言いたいところですが、これは譲れません(笑) 意外と忘れられがちなのですが、日本三景の一つに数えられているのは、弥山頂上から見渡す瀬戸内の多島美のことなんです。すごいきれいですよ。広島から天気が良ければ四国まで見渡せます。できればロープウェーを使わずに山頂を目指していただきたいですね」

安芸の宮島の最高峰弥山の標高は535m。古くからその登山道は修験道とされ、弥山自体も信仰の対象とされてきた。観光地にありながらもコースによっては登頂に2時間半以上かかる。とても軽装での登山はおススメできないコースだ。そんな弥山山頂への登山を佐々木さんは約3日に1回のペースでこなしているという。
「全てにおいて無理していた時期に、とあるイベントで飲んだ山頂でのコーヒーの味が登山を始めたきっかけです。その後、山頂での一杯のコーヒーを楽しみに、運動を兼ねて登り始めたのですが、今ではすっかり習慣になってしまって、今年は年間150回ペースです。もうすっかり登山しないと落ち着かない体になってしまいました(笑) 僕のワークスタイルで登山をしようと思うと、朝5時半に起きて仕事をスタートさせる必要があるんです。そうすると自然と夜も早く寝ないといけない。完全に朝型のライフスタイルになりました。体重も当時から15kg落ちましたし、結果仕事する時間は少なくなったのにアウトプットの量は増えている。

いいことばかりです。僕は仕事もプライベートも含め自分の「人生」として捉えるようにしてます。境目をいかに意識しないかということですね。
自分を整える時間、仕事、家族との団欒、全部自分の人生です。そのすべてが途切れることなく自然に流れていくといいなと思っています。そういう意味で、自然も人も多様性豊かなこの宮島と出会えたことは、僕にとってありがたいことでした。だから、そのことを感じていただくためにも、「弥山に登頂する」という選択肢を旅に加えていただくことが僕がおススメする宮島の過ごし方です」
別れ際、sarasvatiというカフェに移動して、コーヒーを淹れてくださった。
「今日、コーヒーの話全然しなかったですね」と、挽き立ての豆にお湯を落としながらはにかむ佐々木さん。こうして豊かなひと時をお客に楽しんでもらうことが、仕事でもあり、彼のライフワークでもあるのだろう。

伊都岐 代表取締役 佐々木恵亮
学生時代に宮島で人力車のプロジェクトに参加したことが宮島との最初のご縁。
珈琲好きが高じて、13年前宮島でカフェ1号店をオープン。
宮島内唯一のコーヒーロースターとして、島内外に6店舗のカフェやコーヒースタンドを構える。
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