SAPPORO Magazine -Issue 01-11 アスパラ専業農家、赤木陽介さん訪問記

Apr 19, 2021

SAPPORO Magazine -Issue 01-11 アスパラ専業農家、赤木陽介さん訪問記

Interview

スキーリゾート「キロロ」を擁する赤井川村は、知る人ぞ知る農業王国。
なかでもアスパラ専業農家、赤木陽介さんが育てるアスパラは全国区の知名度を持ち、毎年収穫を心待ちにしている料理人も多い。
THE KNOT SAPPOROのレストランLES BOIS(レ ボア)のプロデューサーでもある三枝展正さんもその一人。
ホテルのオープンに先駆け、三枝さんが久しぶりに赤木さんの畑を訪ねた。


Text by Hiroe Morihiro,
Photo by Tsubasa Fujikura

三枝展正 × 赤木陽介
@赤井川コロポックル村

1本に傾けた愛が皿の上で香り立つ

 淡い緑の若葉がどこまでも続くアスパラ畑。絹糸細工のような枝先がさわさわと揺れる畝のほとりに三枝さんが立ったのは、しばらくぶりのことだった。12年前、三枝さんは知人を介して赤木さんのホワイトアスパラに出会った。
 「赤木さんのアスパラは、芯まで火が入った瞬間、香りがぐーっと立ってくる。ホワイトならではのエグミもしっかり感じられ、衝撃的な味わいでした。以来、店の春の名物になりました」
 25歳でアスパラ専業農家を志した赤木さんは「農業は化学」と語る。三枝さんを魅了した豊かな香りは、土壌に含まれる硫黄がつくりだすものだという。理想の味と香りを実現するため、畑の土壌分析を行い、土の微量要素のバランスを整えている。そして、暇さえあれば畑に出掛け、アスパラを飽きずに観察し続けている。
 「アスパラを知って、それに合わせた手当てをする。有機JASの認証も受けましたが、それはアスパラが本来持っている自然の力を大切にするため。寝ても覚めても、アスパラのことしか考えられない。経営者というより趣味、道楽の世界に近いかもしれません」
 そう言って、赤木さんは屈託なく笑う。そんな「アスパラ一筋」の純粋さ、職人気質も、厳しい料理人の世界を生き抜いてきた三枝さんの琴線に触れたのだろう。
 「実は僕が直接取引をする生産者は、非常に限られています。赤木さんのアスパラも本当は独り占めして、誰にも教えたくない。でも、裏腹に自慢もしたい(笑)。赤木さんの努力に見合う料理を出したいと毎年、僕もアスパラと真剣勝負。一番の持ち味である香りを最大限に引き出したシンプルな焼き物として供しています」
 にこやかに語る三枝さんがメニューの監修を務めるTHE KNOT SAPPOROのレストランLES BOIS(レ ボア)でも、今後、赤木さんのアスパラが採用される。まず、9月までは露地で育てるサマーアスパラ(グリーン)が、和を基本とした朝食にお目見えする。本格的な旬を迎える来年5月には、赤木さんのホワイト、グリーン、2種類のアスパラが満を持して登場。さまざまな料理に仕立てられ、旅の食卓を華やかに彩るだろう。
 「THE KNOTは、ビジネスとシティホテルの中間に位置する個性的なホテルですから、LES BOISでは、料理も他とは一線を画するような仕掛けを施したい。アスパラだけじゃなく、和食ならではの香り、季節の味を楽しめる場所にしたいと思っています。ご期待ください」
 生産者から、料理人、そして食卓へつながる美味なる食のリレーは、新たな旅への誘い水。THE KNOTのレストランもまた、目と舌で楽しむ旅のガイドブックなのだ。

ホワイトアスパラに
魅せられた生産者と料理人の
かぐわしくも美味しいリレー


三枝展正
1968年小清水町生まれ。調理師専門学校を卒業後、和食の世界で修行を重ね、24歳で「日本料理をとわ」の料理長に就任。2005年に「日本料理 みえ田」を開店。イタリアンや中華、フレンチのエッセンスを採り入れた独自のくずし料理が好評。2012年にはミシュランガイド 北海道 特別版にて1つ星を獲得。THE KNOT SAPPOROで、レストランLES BOISの監修を務める。

赤木陽介
1980年札幌生まれ。6歳の時に脱サラした両親と共に赤井川村へ移住。札幌への進学、東京での就職を経て、25歳でアスパラ専業農家を目指して赤井川村へUターン。春から初夏には10数名のスタッフと共に1日500㎏のアスパラを収穫し、東京や札幌の飲食店に出荷。